SALA共通閲覧証運用指針制定の趣旨について

問題の所在

1990年,現在のSALA共通閲覧証による共通閲覧証制度がスタートしました*。その時の「埼玉県大学・短期大学図書館相互利用実施要項(以下,「実施要項」。)」によれば,「相互利用の範囲は館内の閲覧及び文献複写を原則とする」とあり,つづいて「ただし,範囲外のことなどについては,当該図書館の定めるところによる」とあります。

制度創設当初は,その運用について関係者の共通理解はできていたのかもしれません。しかし,その後,担当者の交代,大学図書館の学外者へのサービス拡大といった環境変化もあり,運用に関する共通理解は弱まり,各加盟館のサービス方針を反映した運用が行われるようになりました。それは特に,SALA加盟館の利用者を受け入れる際に顕著であるといえましょう。2007年度に行ったアンケート結果**からは,紹介状を介した来館受付が広く行われていることがみてとれます。

こうした現状があることにより,共通閲覧証が想定した(と考えられる)共通閲覧証において,共通閲覧証を用いるメリットは現在著しく小さいものとなっています。

幹事会としての見解,SALAとしての対応策(案)

幹事会は,こうした状況に鑑み,共通閲覧証の今後のありかたについて検討を行ってきました。

共通閲覧証の廃止,といった考え方が出されたこともありましたが,「加盟館の相互協力の推進」はSALAの事業の大きな柱であり,その象徴である共通閲覧証の廃止はできない,という声も強く,幹事会としてはそうした考え方(共通閲覧証制度の存続)を前提として検討を行ってきました。それは,共通閲覧証の運用ルールを明確にする,ということです。

そうした基本ラインを念頭に置いて検討を行った結果,次のような運用を行うことを幹事会案として提案します。

  1. SALA加盟館の利用者に対する共通閲覧証を,「共通閲覧証による利用」と,「(紹介状等を用いた)その他の相互利用」の2種類とする。
  2. 共通閲覧証についてはそれを「入館許可証」という扱いをし,共通閲覧証を持参した者に対しては,入館を認め,人的サービスを伴わないサービス(館内での資料閲覧,文献の複写)を実施する。 利用者はこの原則を理解し,共通閲覧証を行使するものとする。また受入館は,利用者が所期の目的を達成できなかった場合(利用しようとしていた資料が貸出中で利用できなかった等)にその責を負わない。
  3. 「その他の利用」については,利用者の所属図書館からの事前照会等,従来紹介状を用いて行ってきたサービスを想定している。このサービス内容については,各加盟館の方針により実施する。
  4. 上記の考え方,具体的運用方法を加盟館において共有するため,「実施要項」を改訂し,合わせて「共通閲覧証運用指針」を制定する。
  5. [3]のサービスについては,加盟館及びその利用者がその内容を理解することが望ましい。そこで,各加盟館のサービス内容を一覧できる資料をSALAのウェブサイトで公開する。

また,共通閲覧証制度を運用するために必要な発行管理に関する事項も,運用指針の中で定めてあります。

参考

*平成2年10月16日「共通閲覧証」の発行について(加盟館宛文書)
**SALA第21回総会資料(平成20年6月10日)として配布済み

文責

文教大学越谷図書館 鈴木正紀

埼玉県大学・短期大学図書館協議会 幹事会
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